吐き出すものもなくなって、呼吸が落ち着いてくると自分の息が白いことに気付くくらいには冷静になっていた。

「すっきりした?」

その声に夏樹さんの方を見る。

「はい」

そう返すと微笑んで「それはよかった」と体を起こした

「体冷えちゃったし、何か温かいものでも飲みながら帰ろうか」

夏樹さんは自販機でココアを2本買い、1本を私に「はい」と渡した。

「あの、お金・・・」

「これは話してくれたお礼だから」

そう言って車を走らせる。
道中、夏樹さんは自分のことも話してくれた。
高校を卒業して就職したけど編み物をする時間が取れなくなったから辞めたとか、中学生の時に同級生にからかわれて編み物をしなくなった時期があるとか。

「なんでまた始めようと思ったんですか?」

「やっぱり好きだからじゃない?楽しくやってるんだからその楽しさがわからない奴らに俺が遠慮する必要はないなって思い切って友達やめたらだいぶ環境が快適になったよ」

そうやって笑う夏樹さんの逞しさを見習いたいと思う帰り道だった。