「じゃあ、なぜ最初にその男の事が出て
こない?
お前は初め、機織りのために帰りたいと
言った。
男が大切なら、初めに許婚の話をするだろう?
それに、女官からもお前が母を呼んで泣いて
いると報告を受けている。
男を呼んで泣かないのは、お前の中でその男は
それ程、愛しい存在ではないという事に
他ならない。」

そんな…

「そんな事、ありません。
ハヤは、幼い頃からいつも一緒にいて、いつも
私を見守ってくれて、いつも大切にして
くれるんです。
私の大切な人です。」


「それは、兄を慕うのと同じだ。
だが、まあいい。
それ程 言うなら、待っててやる。
そいつがお前を奪い返しに来るのを。
俺は、お前が俺を愛しいと思うまで、お前とは
添わない。
本当にそいつと逃げたいなら、逃げてみろ。」

そう言って、大王は握った私の手を引くと、その腕の中に私を閉じ込めた。

「俺は、お前を愛しいと思っているぞ。
今すぐ、まぐわいたい程に。
だが、愛しいが故に、今は何もしない。
お前が俺を愛しいと思う日が、近いうちに
きっと来るからな。」

なっ…

大王に耳元で囁やかれ、私は言葉を失った。