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夜が更け始め、私は諦めて横になった。

抜け出して帰ろうにも、どう行けば桑の里に帰れるのか分からない。


辺りを闇が支配すると、心にも闇が忍んでくるのかもしれない。

それまで、我慢していた涙が止めどなく溢れ出す。

お母さん… お母さん…

しゃくり上げながら泣いていると、足音が聞こえた。

「だれ?」

私が身を起こして問うと、

「くくっ
泣いていた割に、元気がいいな。」

と声の主が私のすぐ側に跪いた。

この声は…

「大王?」

「ふふっ
そうだ。
アヤは、母が恋しくて泣いていたのか?」

大王は、優しく私の頭を撫でる。

「いえ、泣いてなどおりません。」

私が言うと、

「くくっ
泣き虫の強がりか。
まだまだ子供だな。」

と、大王は、私の頬の涙をその大きな手で拭った。