「でな、一目惚れしてしもうたんや。でも話しかけられへんかった」





1-Aは静かに学園祭準備中………じゃなくて休憩中。

そしていつの間にやら沢田少年のまわりにはクラス全員がいる。




「でも学年とクラスはわかってるんでしょ?なら大丈夫だよ。ね、安仁屋君!」
勇美が言った。



「そうですねー、僕は恋愛の事はあまりわからないんですが、きっといい方向にいきますよ!」
安仁屋も励ます(?)





「そっかなー、まさかあの子が年上やとは思わんかったしなー…」




「別にいいじゃん。素の勇希で」
漆田が言った。



「おう!まあ頑張るわ。みんな相談乗ってくれてありがとう!じゃあはよ準備しよ」



「おー!!!!」



こうしてクラスひとつ(?)にまとまった。





そして。

「漆田君て奈知どころじゃないくらい凄い」と思ったのは勇美だけなのだろうか。



「大ニュース大ニュース大ニュース!!!」
そう言って朝、礼也は走って来た。



「ボク、見ちゃった!!勇希の好きな子、オトコと仲よさげに学校来てた!」



「「「「え〜〜っ?!」」」」

教室に大合唱が響く。






幸い、沢田少年はいない。


「やば!!!それって叶わない恋……」






騒がしくなる中、勇希がやって来た。
「こんにつぁ〜〜!!!」
そう言って沢田少年はやってきた。



「セーフ……」
礼也が呟く。



「ん?なんかあった…?」




「ううううんなんでもないよ!ねッ礼也君?」
勇美が答える。

「うんうん!」
礼也もうなずく。

「……勇美のヘタクソ…」


「ん?!何沙也!!!」


「いいえなんでも。」




「ふーん。まあいっか。フンフフーン♪」
そう言って沢田少年は教室を出て行った。





奈知が真っ青な顔で言った。
「勇希がスキップしてる……異常だ」




学園祭まで一週間。
クラスはそわそわし始めた。

そして沢田少年の恋は急展開する。








「みぃ〜〜たぁ〜〜なぁ〜〜〜」
全身白い服を着て、髪の長い人は言った。



「おっけーおっけー♪暗闇の中だったら結構怖いと思う!」


「そう?リアルでしょ、私。勇美は何よそれ。普通のジャージなんか着て」


「沙也は主役と言ってもいいような役なんだから。あたしはスタッフだもん。呼び込みとかするんだー♪『いらっしゃいませー!恐怖のお化け屋敷ですよー!!!』」




「その顔やばいよ」



「ひっどーい」


そう言い、二人からは笑顔がこぼれたのだった。






「ランランラーンランランラーンランララランランランラーン♪……あ」

他のクラスに、物を借りに行こうとしていた沢田少年は立ち止まった。

目の前にはあの女の子が一人で歩いている。



今こそ、話し掛けるチャンス…?!

きっとこれは神様がくれたチャンスなんだ!!!



そう沢田少年は思ったのか、その子の前に向かった。

彼女は、重そうな旗を持っている。劇に使用するのだろう。



「あのっ…持ちましょうか?」


「あ、ありがとう」


やった、やったぞオレ!!!
「………。」

「………。」





しばらくの沈黙。

何を話せばいいのか迷っていたが、彼女の方から口をひらいた。



「名前…、なんて言うの?あたしは槙野雪(マキノユキ)」



は、話し掛けてくれた!!!
浮かれきった沢田少年は答えた。
「あ、オレは沢田勇希って言います!!!槙野サンて2年ですよね、オレ1年なんすよ」

嗚呼、テンション高すぎやったかなあ……
もしかして…バレた系?
ああ恥ずかしい!!!

そんな思いを余所に彼女は言った。



「1年生かあ、可愛いね」




かかか可愛い?!
オレがか?
あんたじゃなくてか?


ますます頬が赤くなる。


「可愛いなんて滅相もないっすよ!ところで槙野サンとこのクラスは学園祭何するんですか?」

知ってるけど、話題ってこれぐらいしかないねんなあ……



「あたし?あたしのクラスは劇なんだー。でもさ、あたし、学園祭のあと転校するの」


上を見ながら歩く、彼女の瞳には、うっすら涙が見える。




「転校…?」

反射的に出る言葉。







「そう。親が会社やっててね、海外転勤で、一家ドイツに。文化祭終わったらすぐに行くらしいんだ」

少し震えた声だった。



「そんな早くに……」
沢田少年が彼女に一目惚れする前から、決まっていた事実。現実。



「まだここに居たかったなあ……」



少しの沈黙。



学校一大きな木の下で、二人は立っていた――――――




すると、沢田少年は口を開く。

「オレ、明日から一週間毎日ココ来ます!!!だから槙野サンも来てくれませんか?」



自分でも何てこと言ってしまったんだろうと思った沢田少年だったが、
まっすぐ彼女の瞳を見た。








「……わかった。ありがとう」



?!?!?!



「マジすか?!」


「ふふ、ホントに決まってるよ。じゃあありがとう。ここでいいから」



そう言って、彼女は走って行った。







「よっしゃあああああああ!!!!!!!」

ガッツポースで叫ぶ。






そしてこのあとクラスに戻った沢田少年がどうなったのかは、言うまでもない。