座敷に通された。庭は思ったより広く、植木や鉢が整えられている。

「白から話は聞いています。これは、紅亜様にはご覧いただけないものなんですが、真紅には少しでも影小路のことがわかれば、と」

向かいに座った黒藤さん。

るうちゃんはずっと私の肩に乗っている。

縁さんは三人分のお茶を用意してから、端の方で正座している。

そういえば、黒藤さんの式は三基だと聞いたけど、最後の一人は気配を感じもしない。

「水鏡(みかがみ)といいます。本来なら、別の場所にいる二人の対象者が同時に術を使って交信する連絡用のものなのですが、今は影小路本家に俺が一方的に繋いでいます。向こうと話したりは出来ませんが、あちらの様子を見ることは出来ます」

そう言った黒藤さんは、胸の高さに片手を、掌を上に向けて軽く掲げた。

口の中で消えるほどの音量で何か言った。

するとそこに水滴――水が集まり始めて円盤状になった。

黒藤さんと私のお互いに裏表がちょうど見えるように、垂直に浮かんでいる。

驚きに目を見開いている間に、黒藤さんはそれを完成させたようだ。

「本家にいる、母上です」