「いいえ。黒ちゃんに逢えるの久しぶりだから嬉しいわ」

ママは甥っ子に向けて破顔する。

「そう言っていただけるとありがたいです。こちらこそ、旦那様と別れられたあとに何も出来ずに申し訳ありませんでした」

「いいわよ、そんなの。その頃にはもうお父様も亡くなっていたし、紅緒も眠っていたのだから、私が本家と顔見知りになってるって知ってる人いなかったでしょうから」

「ですが、俺は憶えているべきでした。――どうぞ。今日お呼びしたのは、見ていただきたいものがあるからなんです」

悔恨の顔をする黒藤さん。

黒藤さんは私より一歳年上だというから、紅緒さんが眠るまでの一年はママとも逢っていたようだ。