私たちが女性の前まで行くと、女性は膝に手を置いて大きく頭を下げて来た。

それから顔をあげて微笑んだ。

あ、瞳の色が紫色――

「お初に御目文字(おめもじ)仕(つか)まつります。紅亜様と真紅お嬢様でいらっしゃいますね。黒藤が式の一、縁(ゆかり)と申します」

黒藤さんの式だった。

……青春謳歌中の学生かと思った。

「初めまして、桜木真紅です。……えーと、縁さんのことはママも見えてるの?」

隣を見ると、ママは肯いた。

なんで自分にも妖異が見えているのかと、不思議そうな顔をしている。

「あたし、一応黒藤の姉ってことでご近所さんには話してあるんです。黒藤の一人暮らしって言いながら周りに式がいるのも、説明が難しいかなってことで。ですから、いつも顕現(けんげん)して人の姿を取っていて、姉弟二人暮らしってことになってます」