「ねぇ、アイス食べる?」


水曜日の朝一番。


真夏の暑さとともにやってきた彼は、手に持ったアイスの袋を差し出してきた。


「え、もらっていいの?」


「俺にはこっちがあるし」


そう言って見せたもう片方の手で持っている棒アイスは、もう残りわずか。


「もう食べ終わるじゃん。私がもらうより自分で食べた方が...」


「お前に買ってきたんだし、俺が食べても意味ないだろ」


「え、」


「ほら、早く」


「あ、ありがと...../////」


席に座る彼を横目に、私は袋を開けて中からアイスを取り出す。


「えっ!?ちょ、これっ、すごい溶けてるんだけど!?」


姿を現した棒アイスは、今にも垂れてしまいそうなくらい液状と化していた。


「あー、そういや買ってから時間経ってるかも」


「そーゆーことは早く言ってよ!」


片手でアイスを持ちながら彼を睨めば、彼はアハハと楽観的な笑いでごまかす。


「ごめんって.....あ、アイス垂れてる」


「えっ、あ、やばいやばいっ」


私の手に流れてくるアイスにどうしようかと慌てていると、横から手が伸びてきて。


「────え、っ!」


私の手を掴んだ彼は、そのまま顔を近づけてきて私の手に舌を這わせた。


「ん...ちょっ、なにしてんの!?/////」


「んあ?」


手を離した彼は舌で口をペロリと舐めると、不思議そうな顔を見せる。


「なにって、食べないともったいないだろ」


「だ、だからって、舐めることないでしょ!」


「なんかダメだった?」


「う...ダ、ダメじゃないけど...っ、/////」


私の心臓がもたないんだってばー!


彼は今日も私の気持ちになんて気づかないまま、
「アイスうまいな」なんて笑いかけてくる。


いつもと同じ、鈍感な彼。


でも今日は、少し色気のある彼。


まだ私には刺激が強くて、しばらく心音を抑えることができなかった。