心の内はこれ以上ないってくらいに吐季さんの魅力に吐血してる自分が居ますよ、と言ったらこの人はどんな反応をするのやら。
いや、反応は凡そ予想がついているのだ。
『ありがとう』と動じることもなく綺麗な笑顔で終わりを告げるのだろう。
だって、吐季さんには好きな人が居るんだから。
だから、この逢瀬も特別な物ではないのだ。
昼間美代にも言ったように付き合っているという意味も男女の色めいた意味のそれじゃない。
「さてと、じゃあ今夜も付き合ってもらおうか」
「お気に召すまま」
吐季さんの気が済むままにと了承の声を響かせれば、絡んでいた手が柔らかい力で引いてくる。
それに促され靴音響かせ歩みを進めるのはホテルの一室。
……とかではなく、吐季さんが勤めている会社の一室。
自分が待っていた場所も会社の門前で、約束の日はいつもあそこで吐季さんが出てくるのを待っている。
そうして出迎えてくれた吐季さんにこうして誘われた一室でする事もまたいつもと同じ。
「あ、こっちの色好きです。そっちのは…ちょっと濃いかな」
「そう感じるでしょ?でもこれがまた唇に乗せるとちょっと印象変わるんだな」
吐季さんの仕事のお手伝いだ。