今日もそんな姿を店員として見送って、そして何事もない様に備品のチェックやら片付けに戻ると、そのタイミングを待ちかまえていたように怪訝な表情で腕を組んでいる美代が居る。
ああ、言いたい事はなんか分かる分かるんだけど待って。
美代の言葉を矢を受ける前に先にさ、言わせて?
「……ダメだ。今日もクソカッコイイ。ってか、もう歩く犯罪じゃね?」
必死に堪えていた本心を。
その瞬間に隣では美代が頭を抱えながら呆れきった溜め息を零していて。
無言の今は突っ込む言葉を選別しているところだろうか。
それでも思ったより早く言葉の選別は終わったらしい。
「諸々突っ込みどころ満載だけどさ。とりあえず、その言動と無表情が一致してないのが一番気になる。二番目に……なんなのさっきの?仕事中は他人のふりをつき通すってやつ?」
「ふりって言うか。……他人なんだよね」
「…………はっ!?えっ?待って?さっきつきあってるって、」
「つきあってるって言っても恋愛な意味でとは言ってない」
「はあっ!?」
「それに……つきあってるのは。【巴ちゃん】の方だから」
美代の戸惑いも当然。
自分でさえ冷静に振り返ればこの関係が如何にややこしい事であるか分かっているのだ。
こうして真正面から顔を合わせているのに交わす言葉は店員と客の注文確認。
今もこちらは意識しても、あちらの意識がこちらに向くことはない。
当然だ。
彼が…吐季(とき)さんが知っているのは自分であって自分じゃない。
作り物な方の自分なんだ。