吐季の感覚も、それに引くどころか受け入れてる自分も。

どうにもまともな欲求や感覚ではない。

吐季の理想を形にすれば、当たり前である人としてのモラルや理性を捨てた姿という事なのに。

何も思考せず欲求のままに欲しがれなんて、どれだけ飾り立てた恋情からかけ離れたものなのか。

どれだけ粗暴で、でも、どれだけ無垢な欲求か。

どこまで磨かれ完成された形に興味がないのか。

原石を研磨することを生業としているようなものなのに。

原石にしか興味はなくて。

本当に矛盾した変態。

一般的な感覚を念頭に見たらそう思える頭も確かにあるのに。

紙一重で、どこまでもストイックで純粋とか思ってしまう。

そう思う自分の方が吐季の見初めた自分なんだろうな。

吐季の目に適った巴(じぶん)。

そんな自分を表に立たせてやれば、

「吐季、」

「ん~?」

「お前んち行きたい」

「……」

「踏み荒らしていいから、踏み荒らさせろよ」

「いいけど……いいの~?」

「何が?」

「俺の変態はまだ一部だって事。引き返すなら今の内で、踏み込んだら後戻りできないかもよ?」

何を今更。

本当はこの一言をずっと待っていたくせに。

それこそお利口ぶった紳士面なんて気色悪くて鳥肌立つわ。

どこまでも軽口。

試す様に切り返された言葉には当たり前のように付属するニヒルな笑み。

いいの?なんて確認は今更で、そもそも後戻りなんてさせる気もない癖に。

1年も執着した挙句あんな罠張った策士が、後戻りなんて選択肢を用意するような生易しい男だなんて誰が騙されるか。

そんな感覚で向けた視線は非難が強。