「浮気者」
「ぶっは…浮気って。何?【巴ちゃん】は嫉妬対象かよ」
「他の誰よりも嫉妬対象だっつーの。ってか、それ知ってて敢えて底意地悪く引き出してきたくせに」
「うん、強烈に嫉妬して欲しくて。俺が欲しいのって遠慮がちで気遣い上手な巴ちゃんじゃないからね。」
「嫌ってくらいに知ってるよ!」
そんなややこしい一途さにもどかしい思いをしていたのだって記憶に新しい数時間前だっての!
本当、我ながら阿呆らしい。
自分で作り出した巴ちゃんなんて生き物に結果今も昔も翻弄されて嫉妬までするなんて。
なにより、それを知ってて敢えてこんな風に意地悪に持ち出す吐季も狡い。
フンッと鼻を鳴らしはしなかったけれど、不愉快に細めた目をカウンター上の自分のジョッキに移し、残っている液体を飲み干そうと取っ手に指先を触れさせた瞬間。
「遠慮もくそも後回し、余計な思考もなしに暴いて踏み荒らしてほしいんだわ」
ムカつくな。
何がムカつくって、こちらの葛藤や憤りを解きほぐすのも上手いときてる。
思わずジョッキから指先を離し振り返ってしまっていた自分がいて、まんまと吐季の酒のつまみになっているのだと悔しさも募るのに……、
「どMか、」
「ん?フフッ、いや、そんな風に踏み込んできた巴を踏み荒らしたいってどSかも」
「どっちにしろ変態」
「……本心は?」
「超踏み荒らしてえ。そのまま踏み荒らされてえ」
「プッ、変態」
自分でもそう思うよ。
どう考えても変態の域だ。