敢えて、どこまでも底意地の悪いタイミングまで引っぱりこちらの苦味を最大限に引き出してくる。
まさにそんな苦味に眉を寄せるこちらに、見せる双眸は『ざまあみろ』と嘲笑うのだ。
ああ、これに関しては強く返せる筈がない。
大人しく白旗降って吐季の嫌味に耐えるしか…、
「それこそまだ巴ちゃんの方が欲求素直に爆発してくれてたよな」
「っ……」
「……ああ、『キスして』なんて迫ってきたあれ、実はちょっと流されそうなくらいに俺好みで可愛__」
「言わせねえよ?!」
反射的にだ、思考より強く感情が自分の体を動かして、おしぼりを掴むなり吐季の顔に投げつけていて。
行動の理由なんて思考が追い付いたのは、吐季の顔からおしぼりが落ちた瞬間だ。
どんな素っ頓狂な顔が見れるのかと、残りの腹立だしさをそれで解消しようと思っていたのに捉えた表情はまるで動じず。
寧ろこの反応を待っていたと言わんばかりにツラリ笑って落ちたおしぼりを畳み直すのだ。
多分、ニヒルな笑みが言いたいのは一言だ。
「可愛い」
ほらね。
でも、そんな一言で流されてやれる気分でもないっての。