紆余曲折と言うには大袈裟で、それでもややこしい関係を解除にお互いの好意を認めあったのは数時間前。
そんな改めての認識に一瞬は歓喜に満ちた心も、それによって連なる今の気落へと繋がり再び溜息を零してしまうのだ。
当然、
「フハッ、」
「……吐季ぃ」
「だって、どんだけ落ち込んでるんだよ、ククッ。会社出てみりゃこの世の終わりみたいに闇背負って待ってるし」
こっちの落胆なんて御構い無し、とうとう目元を押さえた姿はパーマのかかった黒髪までもを小刻みに揺らしてクツクツと笑う。
実に腹立たしい反応だと思うのに悔しいかな、この人の妖しい魅惑がチラつくのも確か。
それでも、そんな魅惑に流される程今の落胆は浅くはなくて。
「落ち込むよ。落ち込んでちゃ悪いかこの野郎」
「んー、口悪いとこも実に可愛いね。惚れ直すわ」
「チャラい」
「巴限定でね。『何笑ってるのさ?』なんて理由だってまさにその巴の気落ちだって。見てるだけで酒が美味い美味い」
ああ、これ、すでに言い包められるの決定な会話だと、悔しく思えど静かに黙する。
自分とは真逆に、むしろこちらが気落ちする程に上機嫌を見せる吐季には腹立たしくもあり、嬉しくもあり。
どっち付かずの感情で見つめていれば、弧を携えた口元は黄金色の炭酸飲料をゴクリと煽って更なるニヒルをこちらに向け核心をつくのだ。