解放された瞬間に不足していた酸素を貪りつつ、まだ真正面の至近距離にある吐季さんの目を見つめ直す。

こっちは『はあはあ』と荒い呼吸で肩を揺らしているというのに、対する吐季さんと言えば余裕を持って意地の悪い笑みをこちらに返しているのだ。

いや、余裕とは違うのか。

寧ろなんか……目が…貪欲な……

「好きだよ、」

「…………」

「……やっぱ、【巴】じゃねぇと欲情しねぇや俺」

「っ__!!!!?」

ククッと笑うや否やカプリと甘噛みされた唇とその刺激に震えた体。

そのまま再び酸欠の様な口づけの再開かと思いきや、予想に反して離れた顔の距離。

えっ?なんて驚愕の双眸に映るのは実に楽し気に笑いながらカウンターにお札を置いて、そのまま背を向けかけている吐季さんの姿で。

「本日の珈琲テイクアウトでよろしく。あ、おつり諸々外で待ってまーす」

そんな言葉を投げながらその姿は何事もなかったように店の外へと消えてしまうから呆けてしまう。

一体………本当に……何事だったんだ?