流石にだ、息苦しさやカウンターを挟んでの不自由なコレにはまともな意識も回帰するという物。
ましてやここは2人きりの密室なんかでもなくて、今だって突然の出来事に店内は相当ざわめいている。
ってかだ、何が一番問題かって、どう見ても健全なラブシーンには見られない自分達だってこと!!
巴ちゃんの格好ならまだしも……違うからな!?
それこそ今日も女の子が憧れ抱いて来店する様などっちかと言えばイケメンスタイルな自分だからな!?
どう間違っても吐季さんは女には見えないもので、確実に今の自分達はBLってジャンルに括られてるからっ!!
絶対に色々とマズいから吐季さんっ!?
と、キスした歓喜は後回しに、もがいて自分なりにその手を振りほどこうとするのにまったく緩める気が無い力に拘束される。
そんな間にも酸素は貪られて舌を絡めとられて。
巧と言える口づけにはどんどんと抗う意思さえも貪られている気がする。
ああ、メニュー表が落ちた。
レジに陳列してたお菓子の籠も落ちた。
並べ直すの面ど………っ……そうじゃない。
ねえ……何で?
だって、吐季さんと自分は…。
そんな疑問を眼差しに、至近距離で吐季さんと視線が絡んだ刹那だ。
あ、笑っ……た?
目の形だけでそれを感じた直後あんなに強固であった手が緩んで密着しきっていた唇が離れた。