あああ、だけど。

ヤバい。今日も無駄にカッコイイわ。

いつものふざけたノリとかもいいけど、この無表情で他人向けな顔もくっそ好きなんだよな。

絶対に他の物頼まない癖に一応メニュー眺めながら唇触る癖も超好き。

あれ?なんだかんだまだめっちゃ好きじゃん自分。

んん~……やっぱりキスしてぇぇぇ。

なんて、女々しい本心はひた隠しに営業スマイル。

「ご注文おきまりでしたらどうぞ」

「本日の珈琲」

うんうん、わかってる。以上で、Mサイズのブラックで店内お召し上がりですよね。

「……と、」

あれ?『と』?

「あと、君ね」

「………………………」

何だろうか?

衝撃も衝撃と言うのか。

一瞬何を言われているのか脳内処理が追い付かずに接客も忘れて呆けてしまった程。

呆けては居ても見開いている双眸はきちんと目の前の光景を捉えていて、映り込むのは真顔で自分を見つめる吐季さんの姿であったけれど。

あ……すっごい意地悪でニヒルな笑顔。

あれ?えっ?何で?

んん?

「コレ、一回言ってみたかったんだよな~。居酒屋で酔っ払ったオヤジのてっぱん?」

うわ、チャラい。

さっきまでの、いや、今までの自分が知る限り1年この店内で見せていた吐季さんの他所向け顔の崩壊だ。