少なくとも、自分を引き起こし支えてくれる手はきちんと場所を考えて不快感を与えてこない。
支え歩いてくれる歩調も自分の拙い動きに合わせてくれたし、コンビニを見つけると酔い冷ましの水やら栄養ドリンクやらを買って来てくれて。
そのままファミレスで体調が回復し自力で歩けるようになるまで付き合ってくれたのだ。
あまつ、タクシーまで呼んで掌にお札まで握らせてくれた。
これは感謝こそしても不満や否定の感情が浮かぶわけがない。
寧ろここまで至れり尽くせりされて申し訳ない気持ちの方が勝ると言う物。
だから、
「絶対にお礼しますから!」
「いやいや、お構いなく~。久しぶりに若い子と過ごせておじさん逆に満足だったけど?」
「いやいやいや、絶対にそんな価値無いんで、絶対に明日にも諸々お礼させてもらいます!」
「うーん、その気持ちはもの凄くありがたいんだけど、明日って……どうやって?」
『もちろん、いつもの時間に珈琲ショップで!』
……とは、言う前に口内に留める事が出来て良かった。
そっか、そうなのだ。
こちらはどこまでも彼を見知った感覚で過ごしていたjけれど、彼からした自分は初対面の行きずりの【女の子】なのだ。