実際は、男がしどろもどろ何か言い訳して自分を置いてとんずらしたわけで。

一応は助けられたような状況。

自分もお礼の一言を言ってさっさと立ち去るつもりであったのに、結局限界だとその場で蹲ってしまったのだ。

「あーあー、飲んだんだか飲まされたんだか知らないけど。若者がハメ外し過ぎてアホみたいなノリで酒煽っちゃダメだよぉ?ましてや女の子とか、『送って食べて』って言ってるようなもんだから」

言われなくてもわかってるし、案外説教臭いなこの男。

わざわざ地面に座り込んだ自分の前にしゃがみこんで、呆れた顔で覗き込んでくる。

呆れている中に少々の楽しんでいる節がチラつくから性質が悪い。

さっきの男から解放されたけれど、どっちにしろ厄介な男の餌食になっている時間は変わらないのでは?と自分の不幸に項垂れていれば。

「ほら、立てるか?」

「っ……お構いなく。『食べて』なんて欲求一切ないので」

「………ブハッ、あはは、ああ、そっか俺が言ったんだっけか?」

「………」

「大丈夫大丈夫。こんなチャラく見える俺だって食う相手は選ぶし、」

チャラい自覚はあったのか。

そして軽く失礼な。

「それに、……俺、女の子は対象外だから」

「…………」

「フハッ、ドン引き~。ウッソ~。普通に恋愛対象女なノーマルだけど、具合悪そうにしてる行きずりの女の子狙う程性質悪い男じゃないから」

ああ、こんなノリの人だったのか。

チャラいと言えばチャラくも感じるのに、それでもそれは表面的で実は面倒見がいい人を垣間見た気がする。