馬鹿だと思えど切実でもある。

こうしてこの人と携わる事が出来るのは【巴ちゃん】だからであるのだ。

事の始まりはそれこそ偶然の積み重ね。

それこそ美代のお節介な思い付きがきっかけだったと思う。

『女子として生まれた喜びを知るべきだと思う!』とかなんとか、御立派な名目掲げて人を好き勝手着せ替え人形にした挙句合コンの人数合わせに引っ張りこんだのだ。

慣れない格好、慣れない人間関係。

一気に疲労度が加速するのも当然の事だろう。

そんな体に安アルコールは性質悪く作用して、酔いが回りすぎて足元はふらつき体調も最悪。

しかも合コンに来ていた男の一人が獣な本心を善人面に隠して、送るなんて言いながらホテル街に向かおうとしてくる始末。

体調が悪くなかったら回し蹴りの一つでもかましていたのにと今でも思う。

とにかくあの時は諸々が限界で為すすべなく『いや、無理だから』『ごめんなさい』を相手に繰り返していた記憶が薄らある。

そんな最悪な状態に介入してきたのが、

「感心しないねぇ?人の可愛い妹に何してんの?」

夜の街の背景を驚くほど自分の物としたような吐季さんだったのだ。

あ、常連のチャラスーツ男。

なんて記憶が巡るも、あまりに夜の世界が似合いすぎて。

いやもう、ホストを通り越してヤバい人感漂わせて、毒っ気たっぷりに向けてくるニヒルな笑みには相手の男と一緒に自分も逃げ出しそうになった程。