5年前、あたしはまだ10歳だった。
その日はピアノの発表会で、いつも仕事で忙しいパパもママもその日は2人とも時間を割いて来てくれた。
「和華頑張るのよ」
「うん!ママ観ててね!」
ママは優しく微笑み、手を握る。
「俺らの娘だ、大丈夫だろ(笑)」
パパはそう言うとあたしを抱きしめた。
「和華らしくな」
一瞬見えた悲しげな顔はすぐに笑顔に戻る。
「パパとママとお兄ちゃんがいればあたしは最強なんだから!」
小さいあたしは屈託のない笑顔で2人を見た。
そして、ステージへと駆け出した。
あの時の2人の笑顔は今でも鮮明に覚えている。