私を呼びとめる唯兎くんの声が聞こえたけど、止まらなかった。



止まれなかった。




もし、止まったら、唯兎くんの方が、私から離れて行ってしまう気がして。



だってこの感情はきっと、『嫉妬』ってやつで。



私はつくづくめんどくさい女だ。



こんなことしたら、みんなにも迷惑かけちゃうの、わかってるのに。



「果乃っ」



私が部屋に入ってドアを閉めようとする寸前、唯兎くんの手が部屋のドアをすり抜けて来た。




「や、やだっ、来ないでっ」



「ちょ、痛い痛い、力入れすぎだってっ」



唯兎くんの腕を無視してドアを閉めようとすると、当たり前のように唯兎くんが涙目になる。




「…っ、入って、来ないで」




他の女の子の匂いがしてるのに、部屋になんか入れたくない。




「わかったから、とりあえず力緩めて?僕の何がそんなに嫌?」




私が力を緩めると、唯兎くんは部屋のドアを開いて私を抱き寄せた。