とことことリビングにた近づく音がしてドアが開いた。




「おかえりなさい」



「ん、ただいま」




唯兎くんはいつもと同じ顔で、笑っていた。








見慣れた制服姿で、私の大好きな笑顔を見せて、



私が大好きな声を聞かせてくれた。







…女物の香水の匂いを漂わせながら。




思わず、秋帆ちゃんの後ろに隠れる。





なんで?なんで女の子の匂いがするの?




なんで私じゃない女の子の香水の匂いがしてるの?




痛い。どこかが。




香水の匂いで頭が痛いのか、心が痛いのかはわからないけど、ほんとに、痛い。




なんで、他の女の子の匂いをさせながら笑っていられるの?




ねぇ、教えてよ…。





「果乃ちゃん?」




秋帆ちゃんの声が遠くに聞こえる。



なんでだろ。なんでかはわからないけど、でも。



この空間にいるのが辛くなってしまって、私は走って自分の部屋に行った。