「それじゃ、また明日」
「稔、マッサージしといてね」


彼の家の前で伝えると、「ありがと」とにっこり笑った稔は家に入っていった。


「俊介、すごく頑張ってたね」


ふたりきりになり彼を褒めてみたりして。

学校の周囲を五キロ走る長距離走は、ふたりのような短距離の選手にはかなりつらい練習のはず。

でも、朝も練習がきつかったからか、学校に戻ってきてから歩き出した先輩も多い中で、歯を食いしばり最後のグラウンドの周回まで全力を尽くしていた。

練習だからといって手を抜かない彼は、本当にカッコいい。

そんなことは照れくさくて面と向かって言えないんだけど。


「好きで陸上やってるんだし」


そうだけど、普通はそんなことをサラリと言えるもんじゃない。

でも、彼は昔からそう。
自分が決めたことはどんなに苦しくてもやり通すという根性がある。