すると、顔をこわばらせスッと視線を向けたのは稔。
一方俊介はその女子のところに向かっていく。


「ちょっ、俊——」


なにするつもり?

慌てて止めようとしたけど遅かった。


「残念だな。俺たちは心の汚いヤツには興味ないんだよね」


俊介……。
私をかばってくれようとしているの?

彼の言動に胸が熱くなる。


彼はそう口にしながらも、不敵な笑みを浮かべている。

威圧感が半端なく、女子生徒はなにも言えずに走り去っていく。


「さて、練習遅れる」


平然とした顔の俊介は、部室に向かって足を進める。
稔も続いた。

やっぱり、私がいないほうがいい? 迷惑だよね。


「なんかごめんね。私、別々に登校してもいいよ?」


ふたりのうしろ姿にそう声をかけると、俊介が振り向き呆れ顔を見せる。


「いいから。余計なことは気にすんな」
「……はい」


なぜか敬語になるのは、さっきの俊介がとてつもなく大人に見えたから。