ライラの件があっても、スヴェンのアードラーとしての仕事は変わらない。基本的に彼女に付き合うのは夜だけでいいので日中は自分の仕事に没頭する。
戦や国家規模でも大きな事案でもない限り、アルノー夜警団の上に立つ者としてスヴェンやルディガーなどが自ら動くのはある意味稀だった。
普段の彼らの仕事の多くは、下から上がってきた解決済みの事案の報告書を確認したり、王都をはじめとする近隣諸国の内部調査の結果を受けたりするなどデスクワークが主だ。
さらには剣の稽古や戦いを想定した模擬演習など部下の育成を含め、こなさなくてはならないことは山ほどある。
「心配しなくても、今のところ街では彼女の噂は報告されていない」
「そうか」
アードラーに宛がわれた自分の部屋で書類に目を通しながら、スヴェンはなんでもないかのように答えた。
対して、声をかけたルディガーは不服そうな面持ちだ。報告書を持つのとは反対の手を机につき行儀悪くもスヴェンの方に身を寄せる。部屋には今、ふたりしかいない。
メーヴェルクライス卿の家から消えたライラについて不審な話は上がってきていないと、わざわざ伝えに来たのにスヴェンはこの有様だ。
「自分の妻のことだろ。もう少し反応を示したらどうだ?」
「問題がないならそれでかまわないだろ」
目線さえ寄越すことのないスヴェンにルディガーが大きく肩を落とす。
戦や国家規模でも大きな事案でもない限り、アルノー夜警団の上に立つ者としてスヴェンやルディガーなどが自ら動くのはある意味稀だった。
普段の彼らの仕事の多くは、下から上がってきた解決済みの事案の報告書を確認したり、王都をはじめとする近隣諸国の内部調査の結果を受けたりするなどデスクワークが主だ。
さらには剣の稽古や戦いを想定した模擬演習など部下の育成を含め、こなさなくてはならないことは山ほどある。
「心配しなくても、今のところ街では彼女の噂は報告されていない」
「そうか」
アードラーに宛がわれた自分の部屋で書類に目を通しながら、スヴェンはなんでもないかのように答えた。
対して、声をかけたルディガーは不服そうな面持ちだ。報告書を持つのとは反対の手を机につき行儀悪くもスヴェンの方に身を寄せる。部屋には今、ふたりしかいない。
メーヴェルクライス卿の家から消えたライラについて不審な話は上がってきていないと、わざわざ伝えに来たのにスヴェンはこの有様だ。
「自分の妻のことだろ。もう少し反応を示したらどうだ?」
「問題がないならそれでかまわないだろ」
目線さえ寄越すことのないスヴェンにルディガーが大きく肩を落とす。