そして身支度を整えてからライラはマーシャと共に薬草園へ向かった。外は日中でも風が冷たく感じる。夏の気配はすっかり鳴りを潜め、秋が訪れていた。

「あそこには睡眠によく効くハーブもあるんですよ」

「そうなんですか?」

「ええ。シュラーフといって、精神を安定させたり、安眠をもたらす効果があるんです。摂取の仕方はお茶にするのが一般的ですが、独特の風味があって少し好みが分かれますね」

 そう言われると、飲んでみたいような、みたくないような。どんなものなのか気になりながら昨日と同様、薬草園に足を踏み入れた。

 昨日はじっくりと見られなかったが改めて並んでいる薬草を見れば、見知っているものが多くライラは孤児院での日々を思い出した。子どもたちは、シスターは、みんな元気だろうか。

「ライラさま、こちらがシュラーフですよ」

 マーシャがライラに声をかけ、静かに座り込む。ライラも真似て隣に腰を落とせば、背丈があまり高くない草が白くて丸い花を咲かせているのが目に入った。

「これが?」

「ええ、この実のような花の部分を使うんです」

 マーシャの説明を受け、ライラは花にそっと手を触れて顔を近づけた。柔らかな花弁が揺れる。

「あまり香りはしませんね」

「そうですね、ですがお湯を注げば香りも色もはっきりと出ますよ」

 マーシャによるとポット一杯分のお茶を抽出するのに、シュラーフの花を五、六輪入れるといいのだとか。

 やはりここは試してみようという話になり、花を持ち帰ることにした。ほかにもいくつか薬草を見繕う。