「さすがにローブは脱げよ」

「わかってますよ」

 スヴェンの言葉で身を起すと、ライラは覚束ない手つきでローブを脱ぎにかかる。なにもないとはいえ、異性を前にして、どうしても気恥ずかしさが拭えない。

 ところが「もたもたしていると脱がすぞ」と低い声で付け足され、無心で夜着一枚になり、身を隠すようにさっさとベッドに潜り込んだ。

 結局、私がベッドを使わせてもらっている。

 冷たいシーツの感触に思わず身震いする。右側を向けば自然と部屋の中を、スヴェンの方を向く形になり、ライラはどうも気まずく感じた。

 かといって、なにも言わずに背だけを向けるのもどうなのだろうかと迷う。

 伸ばした前髪が重力に従い、顔にかかって左目を隠す。無意識に掻き上げようとしたところで、その手を止めた。

「おい」

 ふいに声をかけられ、ライラは顔をわずかに動かす。スヴェンはデュシェーズ・ブリゼに乱暴に腰掛けていた。

「お前も他人行儀に俺の元帥呼びするのはやめろ。この結婚はあまり表沙汰にはしないつもりだが、それでもある程度は知れ渡る。幾人か声をかけてくる者もいるだろう」

「……はい」

「それから言ったように俺への敬語も気遣いもいらない。俺の前でくらいは猫を被らなくてもいいぞ」

「べつに被っているつもりは……」

 ライラは口を尖らせた。しかしスヴェンは皮肉的な笑みを浮かべる。