今回のライラの件にしてもどこまでが彼の目論見通りだったのか。

「どうだろうな」

「見逃すなよ」

 茶目っ気混じりに返したルディガーにクラウスはふっと微笑んだ。

「心配しなくても会えばひと目でわかる」

 それは、クラウスの探している相手がライラと同じ片眼異色……フューリエンだからだろうか。

 ルディガーが尋ねようとしたところでクラウスはルディガーをまっすぐに見据えた。顔には相変わらず不敵な笑みを湛えている。

「魂が跪く」

 ルディガーがなんとも言えない圧に言葉を失っていると、クラウスが軽い調子で反撃に出た。

「お前こそ、そろそろ決着をつけたらどうだ? スヴェンも結婚したんだ。そばに置いて飼い慣らしている現状に安心しきっていると、そのうち手を噛まれるぞ」

「その忠告はスヴェンからもいただいたよ」

 やれやれと肩をすくめるルディガーにクラウスは真顔で切り込んだ。

「……俺なら奪うけどな」

「やめろよ」

 即座に苦い顔で返すルディガーだが、改めて窓の外を見つめた。空が青くいい天気だ。長く暗かった冬ももう終わる。

「ま、結局俺たちの中ではスヴェンが一番不器用だけれど素直だったっていうことだ」

 そろそろ式の準備に取り掛からなくてはならない。祝うべき当の本人がここにいないのだから長居も無用だ。ルディガーとクラウスも、それぞれ部屋を出た。