ライラが街に出かけてから、一週間。『温める』という名目でふたりは同じベッドで寝るのが当たり前になってしまった。

 といってもここ数日、ライラはベッドに入りスヴェンに抱きしめられるとわりとすぐに夢の中に旅立つので本当に『一緒に寝る』だけだ。

 元々寝つきがいい方だとは思っていたが、さすがにろくに話もせずに眠りにつくのが続くのはあまりなかった。

 疲れているのか、どこか体調が悪いのか。少なからずスヴェンはライラの体調を気にしていた。

 今日は珍しく午後から任務も用事もない。一瞬、ライラに会う考えが過ぎったが、すぐに振り払う。

 自分らしくもないと嘲笑した。自室で目を通しておきたい書類と本でも読もうと思い直し部屋に向かう。

 日中、ライラはマーシャと客間で過ごしているから自分の役割は基本的に夜だけだ。

 スヴェンは自室で椅子に座り、ふとベッドに視線を向けた。正直、睡眠時間は短いが、前よりも眠れているのは事実だ。

 おかげでより頭も冴え、仕事の進捗具合も良好だった。間違いなくライラのおかげなのだが、口にはしていない。本人はどう思ってるのか。

『今日は私が温めてあげる。とりあえずベッドに先に入って温めておいたの! よかったら使って』

 笑顔でまっすぐに告げてきたライラを思い出し、スヴェンはつい笑みが零れそうになった。なにひとつ疑いもせず真面目で、純粋で。自分とは真逆だ。

 そういうところが鬱陶しいと思っていたのに、いつのまに彼女を受け入れるようになってしまったのか。

 考えを巡らせていると部屋にノック音が響いた。短く返事をすると予想外の人物が顔を出す。