小雨などぐずついた天気が続き、久々に秋晴れが王都を包んだ。澄みきった空は雲に邪魔されることなくどこまでも青い。

 上空で舞っている鷹がはっきりと見えるほどだ。冷たい空気は冬がまもなく訪れるのを表している。

 この日、ライラはルディガーとセシリアに同行し、街へ行く手筈になっていた。

 挨拶しようとルディガーの仕事部屋を訪れると、まずは部屋の主そして彼のそばにいたセシリアの格好に目を丸くする。

「やあ、ライラ」

 初めてこの部屋を訪ねたときと同じ位置にふたりはいた。けれどルディガーもセシリアも今は団服を身にまとっていない。

 ルディガーは白いシャツに草色の襟付きの上着を羽織り、黒のパンツにブーツと庶民と貴族の中間的な服装だ。爽やかで長身な彼によく似合っている。

 セシリアは碧色のワンピースを身に纏っており、腰と裾に黒のラインが施されているがそれ以外に目立った飾りはない。

 いつもはうしろでまとめあげられている髪も、左耳下でゆるやかに束ねられ、彼女の綺麗な金髪が服の色との対比でより際立っている。

「私服、なんですか?」

 まじまじとふたりを見つめながらライラは疑問を口にした。

「そう。今日はセシリアとデートの予定だったんだ」

「そ、それはすみません」

「元帥!」

 笑顔のルディガーの対し、ライラは顔面蒼白で謝罪の言葉を発した。そこにセシリアの諌める声が割って入る。