「椿」
さっきまで笑いながら話しかけてきてたのに、急に真剣な顔して私の名前を呼ぶ。
「な、なに…っ……?」
「今、あいつの事考えてただろ」
「べ、別に…考えてないよ…」
「あー、もう、お前本当下手だなぁ……」
下手……?何が……?
「え、なに……?」
「椿はちゃんと隠せてるって思ってるかもしれないけど、バレバレなんだよ」
バレてる…?何のこと?
頑張って笑顔を作って無理してたこと?
ずっと和輝くんの事考えてたこと?
晴翔くんの話聞けてなかったこと?
「何のこと…?」
思い当たることがいっぱいありすぎて、私は直接聞くことにした。
「俺の事だけ考えてろよ……」
晴翔くんは小声でそう言った。
「え……?」
「俺が話しかけてるのにあんまり頭に入ってねえだろ?それに、無理して笑顔作んな」
全部バレてる……。
「なんでわかったの……?」
「俺が話しかけても『うん』とか『そうなんだ』しか言わないし、笑顔作ってる時、顔がひきつってんだよ」
「そっか……、ごめんね…」
「別にいいけどよ…」
「今日は全然聞いてあげられなかったけど、明日は……明日こそは、いつもの私に戻るから」
うん、今日だけ。
「無理すんなよ…?」
「うん!無理しない!」
今度こそ、本当の笑顔で元気に答えた。
「何かあったら言えよ」
「わかった、今日はありがとね…?」
「いいよ、また明日な」
「うん!明日ね」
ここからは道が違うので1人で帰った。