俺とは対照的な何かで構築されたこの女が目ざわりである筈なのに何故か傍に求めてしまう。


暴君にあるまじき感情。


今までなかった何かを芽生えさせるような四季の魔力。


酷く誘惑的な呪い。



「なぁ、・・・呪いにかかった魔王を助ける魔女の話なんかあったか?」



俺の突拍子もない質問に目を丸くした四季がカップを口につけたまま不動になる。


確かに俺らしくない質問だったと認めよう。


だけどその【意外です】みたいな間抜け顔腹立つんだよ。


自分で質問したくせになんだか苛立って眉根を寄せると「やっぱりいい」とぶっきらぼうに返し紅茶を含む。


やっぱり今日の俺はどうかしている。


自分の異常さを流し込むように含んだ紅茶を飲みこむと、ほぼ同時にその声が耳に入りこむ。



「あっ・・・・」


「あっ?」



何か気がついた様に響く四季の声に視線をそちらに移せば、四季の視線は一輪差しの花に注がれて。


同じようにそれに視線を走らせ、続く四季の答えを耳にする。



「魔王でも・・・魔女でもないんですが」


「んあっ?」


「呪いのかかった王子を助ける女の子の話ならあります」


「そんな話あるのか?」


「はい、その王子ってちょっと望様っぽいです」


「なんだそれ・・・」


「我儘で自分勝手で他人に対する愛情もなくて・・・」


「真面目に殺すぞお前」


「お話の話ですよぉ」


「そいつに似てるとか言い腐っておいて・・・」



明らかに気分を害したと眉根を寄せるとクスクスと笑った四季が気を取り直して話を続ける。


寝る子に話を語る母親の様に感じるのは何故なんだろう。



「その王子様はそのせいで魔女に呪いをかけられるんです」


「その魔女がお前か?」


「もう、話の腰を折らないでください望様」



そう言って頬を膨らます四季に紅茶を飲みながら続けろと手で合図すれば、不服顔でケーキを一口飲みこんでから再び語りだす四季。