「・・・・・・あ・・・・・・・・・見え・・た」
響いた声が驚きを孕み、発した本人も酷く驚いて俺を見つめる。
「・・・・・・水難の相が・・・・見えてます」
「ふっ・・・何だそれ」
思わず噴き出して返せば、ふわりとやっと四季らしい笑みを浮かべて俺の顔に手を伸ばした。
それでも触れる直前にぴたりと止まったそれに視線だけで疑問を返すと、少し躊躇った四季が口元に弧を描いて声を響かせる。
「また・・・・この笑顔を見てみたかったです」
「・・・・・やっぱりお前覚えてるんじゃないのか?」
「望様?言ってる事が分かりません・・・・・」
どこまでが本当なんだか・・・。
四季は本当に読む事が出来ない。
困ったように眉尻を下げれば四季が意を決したように俺の頬にその指先を添わせてきた。
「今日は・・・・・望様の匂いですね・・・・」
「お前は・・・・キツイ匂いが嫌いなんだったな」
そう告げながら思い出したようにポケットに手を突っ込むと、小さなそれを掴みとってそのまま四季の顔の横に持っていく。
「望様・・・?」
「動くな・・・・」
言われたとおりに不動になった四季に「よし」と反応を返し、耳にいつもの彩りをつけなおした。
四季の顔の横で妖しく誘惑的に揺れるイヤリングに満足し、すぐに殴ってしまった頬にその手を這わせる。
「・・・・腫れては・・・・ないな・・・・」
「・・・・望様、こういう時は何ていうのか分かりますか?」
「・・・・・・・・・・・【ごめんなさい】?」
「なんで疑問形ですか!駄目ですよ!悪い事をしたら謝らないと」
「ちっ・・・ただの事故だろ」
そう言って投げやりな反応を返せばいつものお節介で煩い女の逆戻り。
またいかにもお説教してますという様に眼を吊り上げるのに嘲笑を漏らし、それに対しても食いかかって来る四季に小さく笑う。
ああ、馬鹿女。
俺が雇い主だろうとも家主だろうとも気にせず自由奔放で、俺の地位や財力、家柄なんて全くと言っていいほど気にとめない。
支配ができない女・・・・。
面倒で、煩わしくて・・・・・・面白い。