なのに感じてしまうそれはきっと・・・。



「はぁ、最近は毎朝しっかり食べさせに来る奴がいたからな」



頭を抱えながらデスクに突っ伏すとあの姿を思い出して同時に昨夜の出来事も思い出してしまう。


そう言えばらしくなく不機嫌だったあの女。


ってか、元々俺の家の客間だというのに閉めだすとかどういうことだよ。


思い出せば空腹も重なりイライラとする記憶に、吹っ切るように体を起こして次の瞬間にビクリとした。


その反応に突然その存在を明確にした姿が噴き出して声を響かせる。



「あははははは、すっごい焦ってる。らしくなくデスクで居眠りしてるのかと思ったわよ」



肩より長いストレートの髪をその笑いによってさらりと動かす。


いつ見ても、いくら歳を重ねてもその魅力は衰えることなく存在するなと心の内で称賛するしてしまう。



「桐子さん・・・・、何か御用ですか?」


「ん?ん~ん、遊びに来ただけ~。はい、コレお茶菓子」



そう言って多分ホールで買ってきたであろう馬鹿でかいケーキの箱を俺のデスクの【書類】の上に雑に置く美麗な叔母。


あの相容れない従兄は確実にこの人の血が濃いといたるところで感じてしまう。


溜め息をつきながらも渋々秘書に2人分のコーヒーを持ってくるように言いつければ。


すでにジャケットを脱ぎブラウスの袖をまくってケーキにナイフを突き立て子供の様に嬉々としているその姿。


コレが大道寺の真の脅威だというのだから驚きだ。


そして思う。


本当にあの父親と血がつながっているのだろうかと。



「望~、ほら座りなさいってフルーツ盛りだくさんで美味しいわよ~」


「・・・いつもなんか幸せそうですね」


「あんたはいっつもつまらなそうよね」


「・・・まぁ、愉快ではないですよ」



そう言って否定も肯定もせずにソファーに座ると差し出されたケーキの皿を手にして躊躇いもなく口にする。



「珍しい・・・」


「・・・何がですか?」


「いつもは私が散々促さないと食べないくせに」


「・・・・・腹へってただけです」



動揺を出さずに言ったつもりだったがそこは感の鋭いこの女神さま。


まるでこの一瞬で全てを見透かしたように「ふぅん」と含み笑いをすると運ばれてきたコーヒーを口に運んでにっこりと微笑む。