歩きながら時計を確認すれば夜の10時を指示し、多分秋光は寝ているだろうと静かに部屋に近づいてノックする。


中でカタリと動きがあって、しばらく待てばその扉が静かに開く。


でも・・・・。


「・・・・・何でしょうか?」


「・・・・・それはこっちのセリフだ」



姿を覗かせた四季だったが、いつもなら全開で受け入れる扉をその姿を確認出来る程度にしか開かず。


その視線と言えば俺の顔に移ることなく下を見つめる。


なんだ、このあからさまに拒絶的な態度は。



「今度は何だ?」


「・・・何か御用ですか?」


「用という用はないが・・・」


「なら、早くお部屋で休まれてはいかがですか?望様はいつだってお忙しいお体なんですから」



そう告げてにっこりと微笑む四季。


いつも通り。


なのにその姿に好意的なものを一切感じず、スッと閉めかけられる扉を強引に開き四季と対峙する。


当然驚愕する四季を不愉快だと睨み下ろし、理由の分からない行動に解釈も求めた。



「四季・・・・どういうつもりだ?」


「・・・・望様が何をおっしゃりたいのか分かりません」


「その反抗的な態度が癇に障る・・・」


「反抗なんて・・・・疲れているんです。もう寝ますから望様もお戻りください」



珍しく、本気で顔を歪める四季を見たと思う。


本気で俺の存在にどこか苛立ち部屋の外に押し出そうとする姿。


でもそんなセンチメンタルな女の感情なんて気にする俺でもなく、ただ養っている女の訳の分からない反抗的な態度に苛立つと押してくる四季の腕を払う様にその手を振った。


瞬間に手の甲に感じた衝撃。


乾いた音が響いて自分の振った手に絡んだ四季の髪がさらりと落ちた。


きらりと光りを反射して床に落ちた青とも緑ともつかない四季のイヤリングが跳ねかえって薄暗い廊下に転がっていく。


それに意識が集中し、すぐに顔を上げれば驚愕して固まる四季の姿。


はずみとはいえ四季の頬を殴ってしまった様な状況に一瞬思考が停止して言葉を失う。


殴られた方の四季といえばその事を確認するように頬に触れてから俺を見つめる。


俺を惑わすあのグレーの瞳で。