別にそれを見て腑抜けた顔をしていたわけじゃない。


それでも無言の真顔で見つめていた俺が考えていた事と言えば。


C・・・いや・・・Dまでいくか?


しばらくそんな寝姿を眺め、さすがに部屋に戻ろうと体重を移動し始めた時にふっと絡んだ力に引きとめられた。


振り返れば四季の華奢な指先が俺のシャツを摘まみ、顔を確認すればうっすらとその眼を開く。



「・・・・・起こしたか?」


「・・・・・・運んで・・・下さったんですね」


「・・・それなりの仕事をしたから特別ボーナスだ」


「ふふっ・・・そんなに頻繁にボーナスを貰ってたら・・・割に合わないです」



そう言ってまどろむ表情で微笑む四季が酷く誘惑的にも見える。


四季なのに、四季のくせにその持ち合わせた清廉な姿とどこかはっきりしない眠りの境目によって彩られる表情が綺麗だと思ってしまった。


あんな香水の匂いがキツイ作り上げた綺麗さの女よりよっぽど・・・・。


ああ、俺もどうかしているな。


自分のまともと言えない四季に対しての印象に苦笑いを浮かべると、目ざとく反応した四季がふわりと笑って疑問を返す。



「望・・さま?なにか・・うれし・・・こと・・・」



多分意識も切れ切れにこの質問をしているのだと理解する。


明日起きた時にはもしかしたらこの会話すら四季は覚えていないのかもしれない。


そのくらい眠気に苛まれている四季に普段なら見せない柔らかい頬笑みで見降ろしてしまった。


そのまま自分の指先を白い頬に滑らせ顔にかかっていた髪の毛を取り除いていく。



「望・・さ・・ま・・・・、やっぱり・・・その・・匂い・・嫌いです・・・・」



意識もまともじゃないのに吐き出した四季の言葉に小さく噴いてしまい、すぐにその感想に同調した。



「・・・・俺もだ・・」



ふわり強まり香ったのはシャンプーの匂い。


自分の目元に触れる四季の睫毛が悪戯にくすぐってきてその長さを示してくる。


触れたくちびるの厚みや感触が心地よくて、触れて離すつもりが吸いつくように啄んでしまった。






そう・・・気の迷い。







全て魔女の魔力なのかその魅力を際限なく発した姿と、見事その空気に呑まれた俺。


夢か現実かつかない様なそのタイミングに惹かれるままに四季に唇を重ねた。