呼びとめる四季の存在そのものを無視すると部屋を横切りまっすぐに入口に向かった。
途中鼻を掠める四季が作った料理の匂い。
僅かに気にかかったけれどそれを上回る苛立ちで振り返ることなく部屋を後にした。
四季がどんな感情を抱いたかは知らない。
だけどもう・・・あのどんな時でも作り上げてくる笑顔は見るに堪えないんだ。
久しぶりに高まった感情はどうも自分だけでは解消できない。
携帯で見なれた番号から都合のいい女を呼び出し家の外に足を向ける。
車に乗り込むと感情のまま乱暴にエンジンをかけアクセルを踏み込んだ。
広い敷地内を走り始めチラリと捉えた四季の部屋であるそこに明かりを捉える。
その窓に舌打ちをすると掻き消すように夜の中にライトを走らせて行った。
女を抱くのは嫌いじゃない。
感情のまま、一瞬の快楽を求めるその時だけは全てを忘れて解き放たれる。
家の重圧も、複雑な心情も、よく形の捉えられないこの苛立ちも・・・。
「臭いな・・・・・」
快楽を得て程よく疲労しい落ち着いた感情を確認するようにベッドの上で天井を仰ぐ。
その間に感じた事を無意識に口走れば、今まで時間を共有していた女がこちらに体を向けてにこやかに疑問を返してきた。
「何か・・言った?」
「ん?いや・・・・甘い香りがすると思ってね」
そう言って口の端を上げ彼女の頬に指先を這わす。
それだけで満足げに微笑む姿は少し萎える。
浅はかで都合のいい女。
俺が求めればその通りに呼び出され、従順にも俺の要望通りに欲を満たしてくれる。
支配可能な女。
安く・・・・性欲を満たすだけの綺麗な人形。
だからそれ以上の価値も輝きもない。
そう頭で思ってしまえばあっさりと熱も冷めゆっくりと体を起こしベッドから抜ける。
落ちていた服を身にまとい始めれば、気を引く様に彼女の指先が俺のシャツを掴み淑女の様に恥らいを見せ見上げてくる。
今更なそれに嘲笑が漏れそうなのを必死で堪え、名残惜しそうに引き寄せ唇を重ねて言葉を落とした。
「また・・・俺を癒やしてくれるよな?」
そう囁けばまどろんだ表情で頷くから心の内で笑ってしまう。
どこまで計画通りに動く人形なんだろうと。