珍しく感情的に叫んで立ちあがった四季が泣き顔で般若の様な形相を作ると俺を見降ろし肩を揺らす。


それを眉根を寄せ見上げると頬杖をついて溜め息をつく。



「・・・・普通なら、今この場で解雇するところだが。・・・お前には命を救われてる。だから・・・満足いく理由を説明しろ」



執行猶予。


そう宣言し四季を見上げると、ようやくその顔を手で拭い始めた四季が躊躇いながら理由を説明し始めた。



「・・・・・しないじゃなく・・・出来ないんです」


「・・・・何でだ?」


「・・・・・こんな風に・・・感情が乱れた時は読めないんです」


「だから・・・何でそこまで感情が乱れる事があるんだよ?」



若干話が進まない苛立ちから頭を抱えてぶっきらぼうに切り返すと、鼻をすすった四季がチラリと後ろを振り返りその元凶になった物を口にした。



「・・・・1日かけて煮込んだんです」


「・・・・・・はっ?」


「望様に栄養つけてほしくて・・・、なのに・・・冷めてしまいます」


「・・・・・・・・・」


「お食事・・・・されないんですか?」




それかよ・・・・・。


一気に気が遠くなりそうな瞬間。


まさか自分が作った物を食べないって理由で泣かれるとは思わなかった。


しかもそれが原因でこの女の価値を落とす事になるなんて。


自分の行動で最悪な結果を生み出した事に落胆し両手で顔を覆い項垂れる。


もう嫌だ・・・・この馬鹿女。


どうにもならない葛藤と戦う様に不動になれば、ここでも響く四季の間抜けな声。



「あの・・・望様。・・・・もしかして眠いのですか?」


「・・・・・」


「・・・・一曲披露をば・・・」


「やめろ。眠くない・・・・」



慌てて声を返して四季の魔力を封じてしまう。


まともに能力を得られず更に眠らされたんじゃ堪ったもんじゃない。


だめだ・・・・本当に。



「もう・・・・いい・・・・」



視線も絡めずに立ち上がるとその勢いのまま歩き出す。



「望様・・・?」



その声も表情も・・・・全て俺を苛立たせる物以外何物でもない。