認めてしまえば、四季は決して範囲外な容姿ではない。
多分他者が見てもその姿は好意を抱くものであろう。
少しカールのついたふわりと軽いロングの髪に、散々語った通りに透き通る様なグレーアイ。
はっきりと大きな目が印象的な顔全体はどちらかと言えば童顔で、なのに先見をする時にはガラリと様子を変えるから面白い。
幼なさを残す姿でま逆に大人びた表情を表す四季。
その姿には確かに魅了されてもおかしくない。
だけど・・・・・、別に抱きたいとは思わない。
中身も中身だし。
そう改めて変わらぬ結論が打ち出されると欠伸をしながら四季の横をすり抜けた。
相変わらず蹲り視線だけを俺によこした四季が躊躇いがちに声をかけてくる。
「お、お戻りですか?」
「そもそも、仕事が終わった時点でこの部屋に俺が留まる理由もない」
「・・・しっかりお休みくださいね」
「・・・・・俺がぶっ倒れて収入源がなくなったら困るもんな」
柔らかく気づかう様に微笑んだ四季に嘲笑を漏らすと嫌みを落とす。
チラリと確認すれば反論もせず困ったように微笑んだ四季に軽く苛立ちその部屋を後にした。
何で・・・・お前はいつも俺に微笑む。
決して俺に逆らうことなく。
なのに俺の予想通りにならない女。
矛盾している存在。
俺とはまるで違う物で構築され考え方も生き方も違い、その存在が煩わしいとも思うのに。
なのに気がつけば傍にいて馬鹿な戯言に付き合ってしまう。
舌打ち混じりに立ち止まり薄暗い廊下でざわつく胸をなだめてみる。
だけど立ち止まれば追いかけるように、記憶した生温い時間を思い出し。
そうして回想してしまえば舌に残る強烈な甘みの記憶が蘇る。
思わず口元を押さえ眉根を寄せた。
「・・・・・気持ち悪い」
あの蜜滴るパンケーキの恐怖はきっと一生ものだと溜め息をついてまた歩きだした。