そんな疑問のまま寝室を抜ければ、広い部屋は煌々と明るくなのにその下に人の気配はまるでない。



「・・・・四季?」



一応声をかけてみても反応のない部屋を静かに歩き始めて、不意に視界に入ったテーブルの上の紙飛行機に手を伸ばすとそっと持ち上げそれを見つめる。


子供の頃に嫌ってほどこれをつくって1人で投げた。


だけど今日の秋光の様に楽しいと思い満たされた時間なんてない。


いや・・・・、一度、本当に人生の一瞬のまたたきの様なその時間はあったか。


今は相容れないあの男と・・・・。


思いだすのはどこか尊敬すらする含みのある笑み。


だけど、そうじゃない・・・・無邪気な物も確かに見せた。


だから・・・なんだ?


自分でらしくなく記憶を辿ったと呆れて紙飛行機をテーブルに置き、視界を遮っていた髪を掻きあげ時計を見つめる。


深夜1時。


こんな時間にこの部屋の主と言えるあの女はどこに行った?


と、視線を動かしたタイミングとその場所でその姿を見事捉えた。


それも意外な姿の四季を。



「・・・・っ・・」



言葉を失ったのは俺の方。


俺を捉えた四季は動揺も現さないグレーの瞳で俺を見つめる。


その姿と言えば、どうやら入浴後らしくまだ水を滴らせる髪を後ろに流し、無防備な裸体に肩からバスタオルをかけているのみ。


白い肌に残る水滴が光に反射するのがより幻想的で、何かの絵画の女神の様だと思ってしまう。


だから性欲が動くとかそう言った感覚で言葉を失ったわけじゃなく、・・・・・純粋にただ見惚れた。


四季の耳でゆらゆらと揺れるグリーンともブルーとも言えそうな石。


それがようやく静まれば、ここにきてやっとその本人が反応を現した。


すぐにその顔を羞恥に染めた四季が肩にかけていたバスタオルにその身を隠して蹲る。



「っーーーー、わ、わす、忘れてました・・・・」



その言葉にかかる物を一瞬真剣に考え、すぐに「ああ、俺か」と判断すると呆れた声で四季に返す。



「自分で引きとめておいて忘れるな。それに・・・・お前の裸見て欲情するほど困って無い」



はっきり言いきって歩き出し、蹲る四季を対して意識もせずに横をすり抜ける。


そう、欲情するまでもない。


正直女には困るほど事足りているんだから。