「・・・・お前の手、冷たいな」


「さっきまで水使ってましたから」


「あ?お湯出るだろ?」


「お湯使ったらお金がかかるかと・・・」


「っ・・、本っ当に・・・馬鹿すぎる!!これだけ不相応なキッチン要求しておいて何で光熱費とか気にしてお湯使わないんだよ!!意味分からん!!」


「あはは、ここまで立派なキッチン用意してもらえるとは思ってなかったですし。それに・・・望様?」


「あっ?」


「それもまた・・・あなたのお好きでない【思いやり】からのお言葉だとお気づきですか?」


「・・・っ・・・違う。勝手な解釈をするな」


「・・・・そう、それは・・・失礼しました」



終始柔らかく頬笑み、俺の苦し紛れな返答にも後追いをしない。


だけども今も触れている四季の手の冷たさ。


この女には不似合いなそれだと思う。


【冷たい】なんて言葉も感情もそれ全てが、どちらかと言えば俺に当てはまるもので。


そう、このいつもヘラヘラとしている馬鹿女には・・・・四季には・・・・【温かい】が当てはまる。


どうか・・・してる。


俺の思考じゃないみたいだ。


茫然とそんな事を思って不動になっていれば、スッと伸びた四季の手が俺からフォークを奪って切り分けてあったベタベタのパンケーキを口に運んだ。


自らの口に運び、今にも垂れそうな蜜に慌てながらそれを押しこめる姿は子供の様で。


なんとか押し込んだのにジワリとパンケーキから溢れた蜜が四季の口の端から流れ出る。


それを指先で押さえ、食べている口元を隠しながら俺を見上げた四季が眉尻を下げて困ったように微笑んだ。