シン…と、静まり返った部屋に、佐々くんの声が響く。
「…そう、湿布。ああ、よろしく」
「…佐々くん…、誰に電話してんの?」
「フロント」
「ふ…?てか…ここ、ホテルぅ?」
ふかふかのキングサイズのベッドに腰掛けながら、辺りを見回す。
明らかにラブホとは違う、上品な調度品。
しかも、ここ一部屋じゃないんだよ?
隣には応接室があったし、脇にはバーカウンターがあって広~いの。
そこを抜けて、一番奥のこの寝室に連れてこられた。
広いベランダにはテーブルがあって、カウチソファーも置いてある。
「マンションかと思った……」
「オレん家が借りてんの。会員制のホテルだよ。こないだも来たじゃん」
ドサッ!
佐々くんが、ベッドのすぐそばに置かれたソファーに勢いよくもたれかかる。
そう…なんだ…
そういわれてみれば、ブルーの天井には見覚えがあるかも……
佐々くん家ってば、お金持ちなのね。
改めて佐々くんのこと、何にも知らないんだなって、思う。
そもそも、1回会っただけだし、一緒にいたのも数時間だもん。
それなのに、一番多いシチュエーションがホテルって、かなり不健全だよね。
「……」
「……」
沈黙が…、辛い。
「花美」
「は、ははは…はいぃっ!!」
声がうわずる。
怖くて、背後にいる佐々くんの顔を見れない。
「他のオトコに声かけてねぇだろうなあ…」
「かけてませんっ!」
「よしっ」
頭にふわりと、佐々くんの体温が伝わる。
ポンポン…
…って、優しく頭をなでてくれる。
ポンポン…
ポン…
グシャグシャグシャッ~~!!
「やぁあっ!髪!絡まっちゃう!」
「うるっせぇ!じゃあ、なんで連絡よこさねんだよ!お前わ!!」
「だって、だって、佐々くんに会いたくなかったんだもん!!」
「オレは会いたかったんだよっ!」
――え?
想像もしてなかった発言に、思わず佐々くんを見ようと顔を上げる。
と…、あ、上がんない!?