<side 佐々>


このっ…

バカッが!!

こいつは、オレを怒らせる天才だな!!

馬鹿と天才は紙一重ってのはマジ、よく言ったもんだよっ!!


「何やってんだっ!花美ぃっ!!」


オレの大声にあたふたと、目の前のオンナに抱きつきやがった。

抱きつく相手が…


違うだろがっ!!


花美の後ろ襟を取り、オンナから引っぺがす。


怪我、ねぇよな?

間に合ったよな?オレ。

マジ心臓が止まるかと思った……


とにかく、ガラにもなく花美の顔が見たくて、抱きしめたくて、

そのまま強引に引き寄せる。

なのに、こいつときたら、


「たたた…助けてお姉さまぁっ!!」

「「お姉さまぁ!?」」


花美の下敷きになってるショートカットのオンナのと、何気にハモった。

オレに首根っこをつかまれながら、手足をバタつかせ逃げようともがく花美。

それを、口を開けたまま、そのオンナがぽかんと見てる。


すぐ横には、頭から『芝生には入らないでください』の看板に突っ込んで、気を失ってる男が1人。

その上に、重なるようにしてもう一人の男。

もう一人いなかったか?

そいつは、とっくに逃げたと、ギャラリーの1人が教えてくれた。

腕に中の花美は、オレのほうも見ないで必死に脱出しようともがいてる。

ふつふつと怒りがこみ上げてきた。


すっげぇ…むかつくんだけど……

助けてやったのは、オレだろっ!!

見向きもしねぇで、その態度は何だっ!!

殴りかかろうとしてるオトコの前に飛び出しやがって、オレが来なきゃ、


どおなってたと思ってんだよっ!!



「行くぞっ!!」


花美の首に腕を回し、小脇に抱えるように押さえ込む。

オレは有無を言わさず歩き出した。


「いぃ~~やあぁぁ~~っ!!」

「うるせぇっ!!」


オレにズルズル引きずられながら、しぶとく抵抗する花美は、歩こうとしねぇ。


「助けてえぇ~~!!」


……花美…、てめぇ……

これじゃ、まるでオレがワルもんじゃねぇかよ!!