「はあ、はあ…、はあ」


ようやく木陰に差し掛かったところで、立ち止まる。

突然、何だかよくわからない感情が込み上げてきて、無意識に呟いた。


「……佐々くんの、バカ…」

「うわっ!超カワイイじゃん。なになにどおしたの?」

「……!?」


木々の死角になってて気づかなかった。

森の奥のベンチにチャラ男が3人。

私を見つけて近づいてきた。


まだ明るいし、広場のほうには人も結構いるけど、距離的に誰かに気付いてもらう事は難しそう……

穏便に断れればいいケド、無理そうなら走って逃げたら何とかなりそうかな?

退路の確認をする。

森側は人がいない、ダメ…。

広場の噴水を目指そう。

そう考えた矢先の事だった。


「ねえ、花美って…、あんたのことだよね?」


そろそろ沈みはじめた太陽を背にして、セーラー服姿の女子高生が立っている。

身長は170くらいあるだろう、長身のオンナの子。

少し赤味がかった茶色のショートカットの髪が、よく似合ってて、

その、長めの前髪から覗く瞳は、強い憎しみをたたえて、私をにらんでる。


「……?」


だ……

――誰…デスカ?


どっかで会ったこと、あったっけ!?

そう、記憶の糸を手繰り寄せようとした瞬間だった。



パシィーン!!!!



彼女の平手打ちが、私の左頬に見事にヒットした。


「え…」


左のほっぺたが、ジンジンし始める。


えぇ…?

な…なに…?


なんなのおぉぉおお~~っ!?