<side 花美>

あ…、あれぇ?

頭がぼーってする。

目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。


「あら、目が覚めた?」


――保健室…?


そっか、そういえば登校した直後に、なんだかカラダがものすごくだるくなっちゃって、保健室に行ったんだっけ……

保健の先生から見せられた体温計は、


「ぐわっ…、38.8度…」


その数字を見て、いっきにカラダがいうことをきかなくなる。

風邪?

う~ん、他の症状はないし、過去の似たような症状について思い出す。

遠足の前とか、初めて告白された時とか、高校入試の翌日とか……

そして、昨日の佐々くんとの出来事を思い出す。


――…まさか、知恵熱ぅ?


ぐらり……


情けなさに、めまいまでしてきた。


「どう?…帰れそうかしら…?霧里さんの場合、家に連絡ってわけにもいかないでしょう」

「…タクシー、呼んでもらっていいですか?」


何とか家に到着すると、そのまま深い深い眠りに落ちていった。

そしたら、子どもの頃の夢を見た。

同じ様に熱が出て寝込んだ、小学6年生の私。

プールの後、クラスの女子に更衣室に閉じ込められたんだっけ……

クラスの女の子のひとりが、好きだった男の子にフラれたんだって。

私が原因で。

よくわかんないや…

その男の子って、誰?

私は名前だって知らなかったのに……


『ガキだからって関係ねぇだろ!きっちりナシつけさせてやる!』


パパが怒ってる。

パパってば相変わらず言葉が悪いんだから。

ママに怒られちゃうよ?


『もう!花美が起きちゃうでしょ!しずかに!』


ほら、ね?

ママが私のおでこに自分のおでこをコツン…と、あてて熱を測る。

頭を優しくなでてくれる。


――いいきもち…


あの後、今の高校の小学部に転校したんだっけ。

転校して、また熱出しちゃうんだけど。

今思うと、よく熱を出す子だったんだなぁ、私ってば。


ベッドサイドで見守る両親の気配を感じながら、子どもの私は安心する。

ふと目を覚ますと、パパとママがキスしてたりして、私は慌てて寝たフリをするの……

仲良しで、大好き。

パパとママ……


幸せな思い出に浮かされながら、私は夢の中で寝たフリをした。

こんな夢を見られるのなら、たまには熱を出すのも悪くないなぁ……なんて思いながら。


うん。

そうね、そうしよう。


神様にお願いしとかなくちゃ。

明日も、見れますように……って…