「…なんのコトだよ。成久」


思いっきり、にらむ。

我ながら態度悪りぃとは思うけど、しかたねぇだろ!?

こっちは、寝不足でイライラしてんだよっ!

あんな、生殺しで放り出されてだなあっ、寝れるかっての!!

かといって、あの後、他のオンナを呼び出す気にもなれなかった。


「はぁ~…、彼女からのメールがないからって、あたるなよ」

「彼女だぁ~?」


誰のコト言ってるんだ!?

明らかにオレの反応を探るような態度が、さらに気にいらねぇ。

しかも、全部お見通しってカンジの、

その……目。


「お前、プライド高いもんな、ここで自分から連絡したら、負けみたいな気がするんだろ?」


――まあ、確かに……

じゃ、ねぇよ。


「すっごいキレイな子だったもんな~」

「……」

「……」


オトコ同士で見つめ合ったって、なんも面白くねんだけど……

言葉が出ない。

黙り込んだまま、じっと成久をにらむ。

成久もオレを見据えている。

ニヤニヤしながら。

そして、数秒の沈黙の後、

先に口を開いたのは成久のほうだった。


「…あの制服……は…」

「…おい……」


――まさか……


「聖心女子だろっ!!」

「……!?」


「名前…は……」

「おいっ!チョット待て!!」


「花美チャン!!」

「なぁんで、お前が知ってんだよっ!!」


思わず立ち上がった勢いで、座ってた椅子が吹っ飛んだ。


ガタン!!


…と、同時に、始業のチャイムが鳴る。


「あははっ!情報収集は、唯一俺がお前に勝てる得意分野だからさ、まあ許せって、じゃあ行くわ!」

「てめ~…、後で説明しろよ!いいな!」


つまんない授業を聞き流しながら、オレは昨夜の花美の言葉を思い出していた。


『佐々くんの、お友達?』


あ~、見られてたな、そういえば“後輩連中”に……

マジか…、聖心女子って、超がつくお嬢さま高校だろ。

そういえば、自宅も駅からも近いし、結構いいマンションだったな。


――花美……


名字すら知らない。

その事実。


「……くっそぅ…」


成久がオレより花美のコト知ってるってのが、すっげぇムカつく。

でも、意地が邪魔して身動きがとれない。


オレからは、

絶対にっ、

連絡なんかしねえ~!!