「オレからは、絶対しねぇぞ……」


そう、呟いた瞬間、


「何が、しないんだ?」


頭上から降ってきた声に、おもむろに頭をもたげた。


「えらく、機嫌悪いじゃん。佐々」

「悪かねぇよ……」

「そうか?あの手の振り方はないぜぇ?」


そう言うと、さっきのオレの真似だろう。

犬や猫でも追い払うかのように、

シッ、シッ……と、手を払いながら、一人のオトコが遠慮なくオレの前の席に座った。

すると、今度は廊下側からも


「きゃああぁぁ~~~っ!!」


黄色い悲鳴があがる。

またかよ……

なんでオンナってのは、あんなにムダに元気なんだ?


「用がねぇなら自分のクラス戻れよ。成久(なりひさ)…」


なかば諦めのため息をつきながら、懇願した。

こいつがいると、余計オンナがうるさい。

でも、そんなオレの様子を楽しむように、頬づえをつきながら成久が笑う。

珍しいコトもあるもんだ。

あまり感情を表情に出すタイプじゃねぇのに。


「なぁ、お前は何かいいコトあったのかよ。機嫌んいいじゃねぇ?」。


オレと並ぶ180cmほどある長身に、染めてない黒髪。

たいして眼が悪いわけでもないくせに、かけてるメガネはセンスがよくて、気分によって週に2~3度変わる。

今日はグレーのアンダーリム。

始めてみるタイプだ。

こいつとは高校入ってからの付き合いだけど、一生つるむんだろう。

マジ、いい奴。


「そんなイライラするくらいならさ、メールなんか待ってないで、直接電話したらいいんじゃないのか?」

「……?」

「いつもそうやって、オンナ呼び出してるだろ?待つなんて、佐々らしくないなぁ」


こいつ、唐突になに言ってんだ?

しかも、こんな楽しそうな顔は出会ってからみたことない。

必死で笑いをこらえてるような……

なんか、すっげぇムカつくんだケド……