自分のベッドにゴロンと転がると、スマホの画面に表示された、名前を見る。

佐々…、伊都?


「“いと”って読むのかなぁ?」


オンナの子みたいな名前。

腕が疲れてきたので、胸の上にスマホを置き、瞳を伏せる。


――フワフワしてる……


ほんの数十分前の出来事が、私のすべてを占領してる。

佐々くんの残した熱に浮かされながら、私はゆっくりと眠りに落ちる……


「……」


…はずだった。


眠れないんですケド!!

心臓が、まだドキドキしてるんですケド!!


「うぅ~……」


――メール……


してもいいのかなぁ。

鬱陶しがられてもやだなぁ……


「言われたコト、あったし…」


何人目の彼氏に言われたんだっけ…?

もう、名前も顔も覚えていない人ばっかりだ。

フラれるのなんて慣れてる。

大学生の彼は、今日で付き合ってちょうど一週間目だった。

その前に付き合ってた人は、え~と、たった3日で別れたけど、どっかの予備校の講師だった気がする。



最近はそんなのばっか。

下心が丸見えの、付き合ったとも言いがたい人ばっかし。

そう思ったら、

今日、たった数時間しか一緒にいなかった、佐々くんのほうが、

よっぽど私のコト知ってるんじゃない?

処女ってのも、見抜かれちゃったし…


「はぁあああ~~っ……、これから、どおしよう」


目を閉じる。

っと、佐々くんの少し怒った顔が頭に浮かんだ。

笑顔じゃないのは、なぜだろう?

思い出すのは、

少し困ったような……

私を心配してくれた、不機嫌な顔。


「…メチャクチャに…してくれて、…よかったのになぁ」


本当に、よかったのに。

今でも、佐々くんならいいって思う。

でも、だからこそ、


“抱いてくれる”


って、約束してくれたけど、これ以上、佐々くんに迷惑かけちゃダメな気がした。

それに、スキになることが条件なんて、絶対に無理。

うん。

やっぱり、


――メールは…しない。


連絡があっても、出ない。

あの交差点にも、しばらく近寄らないようにしなくっちゃ。


連絡があっても、出ない。

あの交差点にも、しばらく近寄らないようにしなくっちゃ。


そう、私は…Hだけしてもらえればいいんです。


恋なんて、

いらないの……