「どこ行くつもりよ、花美!出てくことないってばっ!」
「お、お姉さま……痛…た、……だから、スーパーに……」
「行くあてなんかないくせに!あんたオンナ友達いなさそうじゃん!!」
「……うっ!」
出て行こうとしたこと、簡単に見抜かれちゃってる。
そう、お姉さまの言うとおりだ。
行くとこなんかない。
ないけど……
お姉さまが、出て行くことないって、そう言ってくれるのはうれしいけど……
――でも…っ…
チラリ……
視線を感じて顔を上げると、お姉さまの肩越しに藤堂さんが怖い顔してるのが見えた。
「ず~っと、いていいんだってばっ!花美のことは、私がちゃんと守ってあげるんだから!!」
「バカいってんじゃねえぞっ!ユリ!!」
ビクンッ!!
本能的に、私の体が痙攣したみたいに跳ねた。
低い声の振動に、無理やりカラダの芯が共鳴させられる感覚。
そのドスの利いた声に、そばにある何もかもが身震いした。
その迫力。
本気で怖い。
「オンナにオンナが守れるかよ!ガチで殴りあったらオトコが勝つに決まってんだろ!!」
なのにお姉さまってば、
「そお~いうのを、男女差別っていうのよ!」
全っ然平気みたい。
「そおじゃなくてだな……」
ハア~ッ…
と、ため息なのか、藤堂さんは少し深めにタバコの煙を吐くと、
「生まれながらの性差ってもんがあんだろうよ。オトコにガキが産めねぇのと同じだ……」
そう言いって、まだかなり残ってるタバコを空き缶の中に落とした。